井上ひさし研究会設立メッセージ

 万巻の知恵のつまった二十二万冊の書物の運びこまれている遅筆堂文庫、ここを拠点に井上ひさし研究会が設立されます。

 小説と戯曲の両道を行き、評論や随筆にもならぶもののない力量を示し、護憲平和と反戦を説き「九条の会」の呼びかけ人の一人、そして言論界でも重きをなした井上ひさし。

 井上ひさしの笑いと涙は放送作家、コント作家として、またおびただしい量の短編、中編、長編小説に提示され、日本および日本人の中心にある諸問題を演劇の言葉と音楽とのこのうえない調和に見出し、こうして小説家と戯曲家としての仕事は、ちょうど車の両輪のように力づよく駆動しつづけました。

 「ほんとうの戯曲家」とは、その名前で民衆を劇場に引き寄せ、独特の思想と技術によって舞台の生命を創造しながら、民衆とともに愉しむことのできる才能をいうのである。とかつて岸田國士が書いたことがあります。

 井上ひさしは、民衆に語りかける演劇の言葉の持つ「ほんとうの戯曲家」であったばかりではない、民衆の言葉にもまた耳を傾け、民衆とともに愉しむことを知っていた「ほんとうの小説家」でもありました。

 井上ひさし研究会は、井上ひさしの遺した数知れない言葉の宝石を読みかえすことによって、その一人一人が宝石の所有者になろうとおもいます。

今村 忠純(大妻女子大学名誉教授)

 

 

 

入会条件

下記の条件を満たしている方ならばどなたでも入会できます。

井上ひさしの本を読んだことがある方もしくは井上芝居を観たことがある方

設立呼びかけ人

井上ユリ(井上ひさし夫人)、浅田次郎(作家)、今村忠純(大妻女子大学名誉教授)、生方卓(明治大学教授)、小池光(歌人、仙台文学館館長)、小森陽一(東京大学大学院教授)、島村輝(フェリス女学院大学教授)、高橋敏夫(文芸評論家)、出久根達郎(作家)、富岡幸一郎(文芸評論家、鎌倉文学館館長)、成田龍一(日本女子大学教授)、馬場重行(米沢女子短期大学教授)、山口昭男(前岩波書店社長)、山下惣一(作家)、吉岡忍(作家、日本ペンクラブ会長)
<50音順 敬称略>


井上ひさし研究会報告

①文学サロン「文学殺しの中の『握手』」


馬場重行氏

参加者

11月10日(日)午後2時~4時 / 川西町フレンドリープラザホール舞台上
講師:馬場重行氏 米沢女子短期大学教授

 今回の講座を‘文学殺し’というドキリとするタイトルに馬場先生がなさったのは、いま高校の国語教育では「文学」がないがしろにされ、危機的な扱いになっているということから、とのこと。一方で中学の国語の教科書には、井上ひさしの短編小説「握手」が掲載され続けている。先生はこの作品を丹念に解説し、文学の楽しさ、深さ、魅力を解かれた。参加者の中にはこの作品を掲載している教科書会社の光村図書の社員さんもいらっしゃり、平成5年に教科書に掲載され始めたときの井上さんと出版社さんとののエピソードなども語られた。研究会らしい多面的に作品をみるよい講座となった。


②三学会合同国際研究集会 分科会 「井上ひさし- 世界との対話」


ロジャー・パルバース氏、成田龍一氏

11月24日(日)午前10時~12時 / 共立女子大学410教室
講師:ロジャー・パルバース氏、成田龍一氏、(研究会・遠藤)

 講師のロジャー・パルバースさんは1976年に井上ひさしさんをオーストラリア国立大学に招聘した人物。作家、翻訳家、大学教授と多彩。井上さんと共通な関心は宮澤賢治だったことから意気投合。それらのエピソードを含めて楽しい講演となり、会場は終始笑いの渦となった。


③ロジャー・パルバース氏と井上ユリ氏の対談


会場の様子

11月27日(水)午後6時~7時30分 / 上智大学2号館17F会議室
講師:ロジャー・パルバース氏、井上ユリ氏

 ロジャーさんが井上ひさしさんと出会うきっかけになったのは、「道元の冒険」を観たこと。この作品の陰にある風刺、権威に対する挑戦などがとても興味深かった、それまでの日本の芝居のstructureには収まらない作品だと思った…などロジャーさん(外国の方)からみた井上芝居の魅力を、ユリさんとのトークを挟みながら面白く語られた。会場は準備された椅子が足りず、急きょ隣室から運び入れての大盛会となった。