写真:佐々木隆二


今日11月16日は、井上ひさしの誕生日です。
誕生日にまつわるエピソードを、地域おこし協力隊で遅筆堂文庫研究員の井上恒さんに書いていただきました。


このひとはいつ生まれたのか?


つくづく、一筋縄ではいかない人なのだ。 「ぼくの生年月日は昭和9年11月17日である。それなのにぼくは昭和10年の生まれである、とずいぶん長いこと吹聴してまわっていた」(『ブラウン監獄の四季』わが人生の時刻表)。
昭和ヒトケタと呼ばれたくなかった、などと言い訳している。さらに昭和11年生まれとたぶらかしたこともある。
この人の筆の「狸の毛」はこれにとどまらない。戸籍上は「11月16日生まれ」だった。公式にはこちらを採る。が、さらに、そもそも10月に生れて、役所に届けたのが遅くなった、という証言もある。
生まれた時から遅筆堂。つまり公文書なんぞに縛られたくなかったのだと思う。お手軽に知ろうとするネットユーザーは手玉にとられてコピペ混線ご愁傷様。
血液型とか星座で判断されるのも大嫌いだった。 いずれにせよ生きていれば米寿である。徹底してコメにこだわったひとゆえ、盛大な餅ぶるまいで祝うところ、だが嫌がるだろうな。しょうがない、10月から11月は毎晩、ひとりこっそり樽平純米酒を献杯し続けます。(井上恒)



写真:佐々木隆二