紹介している本は井上恒さんの個人所有の本です。(ご興味のある方はお気軽にお声がけください)


私の本棚ひとつかみ



長篇小説『一週間』のモチーフのひとつは、ソ連と日本の悪しき共通性=国際法を守らない・人権を守らない・憲法を守らない・反省しないことへの告発である。わけへだてのない自由社会をめざしたはずのロシア革命が、なぜ道を外したのか。この作品に込められた井上ひさしの歯ぎしりが聞こえてくる。

 

キエフに生まれ、スターリンの圧政に苦しんだミハイル・ブルガーコフという作家がいる。実は、私にとって一番(井上ひさしと並んで)大事なひとで、二人ともユーモア小説と喜劇の掛け持ちだった。

普段はそっち関係の本ばかりを読んでいる。で、今おすすめは、新進ロシア文学者、奈倉有里の仕事。ほぼ一年の間に小説の翻訳二冊と著書二冊が出た。ロシアの小判鮫ベラルーシの状況を描いたフィリペンコ著『理不尽ゲーム』と、まさしく『一週間』に描かれる第二次大戦時ソ連の法令無視・人道無視・人命無視を扱った同著者による『赤い十字』(いずれも集英社刊)。

そしてイチオシが、奈倉自身のロシア留学体験を綴った『夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く、』(イースト・プレス)。昨年10月に出版されたこの本の帯には「『分断する』言葉ではなく、『つなぐ』言葉を求めて。」とある。

 

プーチンという名字は「道」を意味する「プーチ」が由来だ。いま、ロシア国外にいる全世界のロシア文学者が、ロシアに関わる全ての者たちが、心の底から悲しみ、憤っている。

 

今年の吉里吉里忌記念講演は渡辺えりによる「井上ひさしの『一週間』」。(井上恒)


※写真で紹介している本は、井上恒さんの個人所有の本です。ご興味のある方はお気軽にお声がけください。



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『てぶくろ』(絵:エウゲーニー・M・ラチョフ/訳:うちだりさこ/福音館書店)は、ウクライナ民話です。

『一週間』(著作:井上ひさし/新潮社)