写真:佐々木隆二


「新日本のホープ⁉」

1959年1月号の月刊誌「若い広場」に“新日本のホープ”と紹介されているのは井上廈(ひさし)さん、当時24歳です。

この作品が掲載されている雑誌を発見したのは朝日新聞社の山口宏子さんです。(朝日新聞11月4日夕刊掲載)

山口さんは長く演劇取材や劇評を執筆された方です。(先日ご退職されました)

この井上作品は国立国会図書館で調査していてみつけられたと仰っています。

あるか無いかわからない膨大な雑誌の中から井上作品を発見するというのは、‘砂漠でダイヤ’‘干し草の中の針’を探すようなこと、頭が下がります。

 

作品名は「乞食よ、ちょっと待て」

内容は主人公(というより一人芝居です)が、泥棒の見張り役をしている元物乞いが自分のこれまでを語りながら世間の批判もしていくという話です。が、さらにこの戯曲の趣向の面白さは、自分は役者だと観客に投げかけてくるセリフがあるところです。

そこはまるでコントのようです。この作品も井上作品の原点の一つに見えてきます。このような趣向は生涯を通して作品に表れています。

 

 11月16日は井上ひさし91歳の誕生日。

本人は空の上から“見つけてくれたね~”と、にんまりされているかもしれません。


文・遠藤敦子(川西町立図書館館長/遅筆堂文庫学芸員)